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2024/05/03 02:04 |
なんとか
部屋掃除は誤魔化せた気がしないでもないです。
掃除機はかけたからあとで床拭けばいいんだよね。
掃除難しいなチキショウ。

そんなわけで昨日の台風で待ち惚け食らってる時とか帰りにちまちま打ってたオチが思い付かない上に主義主張のない小話。
跡部は出ますが喋りません。
我ながら非常に面白くない物が書けたので流し読み推奨。





*******************************



ガタガタと部室の窓が揺れる。
時折木の葉が窓へぶつかりまたどこかへ飛んで行く。

台風はすっかり通り過ぎたけれどもまだ風も止まないし校庭にも折れた木の枝やどこからか飛んで来たゴミが散乱してどこか非日常を思わせる光景が広がっている。

こんな時なのに休校にもならずに平常通りに授業やるってのが私立の嫌なとこなんだよねー…。
公立なんて休校してるらしいのにさー。


あたしは大きく溜め息を吐いてゴロリと机に頭を乗せた。
机のくせに湿気を帯びていて不快な事この上ないわけだけど、地獄の蓋が開いたように生暖かい外に比べたら何倍もマシだ。
外でジローちゃんと岳人の騒いでいる声があたしの耳に届く。
いつもならば混ざりに行きたいところだけど今日は断固として拒否する。
暑いもん。
本当運動部って大変だよね、あたし絶対こんな日にテニスとかしたくない。
エアコンを除湿にして頑張ってもらってる中で部室の掃除をしている最中だけど正直やる気が出ない。
おためごかしのように机を拭くふりをするけれどもやはりやる気は出ない。


「帰っちゃっおうかなぁ…」


雨でベコボコに溶けた段ボールやら根元から折れた枝やらを片付けてる最中から思ってた事をポツリと口に出してしまうとムクムクと帰りたい気持ちが膨れあがる。
そうだよね。
こんな時にマネージャーとか必要ないよね。
そもそもみんなもう中学生なんだから自分の事は自分で出来…………なさげなが何人かいるけどフォローできるのがいるからいいよね。
帰っちゃっても支障ないよね!


「……帰ろう」


あたしはガタリと椅子から立ち上がり手早く帰り支度を開始する。
こんな日なんだもん女子は帰ってもいいよね!
あたしが許すからいいよね、帰っても。
善は急げとばかりにジャージから制服に着替えながら逃走経路を考える。
正面から出たら明らかにバレる。
となればコートに面してない窓から外に出て裏から校外に行くしかない。
荷物になるからジャージは明日持って帰るとして、ひとまずロッカーに不要な荷物を放り込む。
小さく掛け声をあげ、窓から外へ飛び出る。

幸いにも周囲には誰もいない。
肌に張り付くような空気に汗が吹き出してきそうな感覚にとらわれる。
こんな中外で仕事なんかしたくないっつの!

あたしはキョロキョロ辺りを見回しながら身体を屈めて裏口へと急いだ。
ここでうだうだして見つかってお説教食らったりでもしたら間抜けすぎる。
どうやらまだ個人練習にはなっていないのか裏口付近にも誰の姿も見えない。
まさに逃走日和。


「こうも上手く行くとは思わなかったなー」

「何がですか」


裏口の戸に手を掛けながら何気なく呟いた言葉に返事が届いてギクリとする。
背後に突然現れた人の気配。
顔だけ声の方向へ向けると案の定二代目いつも不機嫌大帝の日吉がなんともうさんくさげに屈んだあたしを見下ろしていた。

「…………何って、その……か、買い出しの、準備が?」
買い出しは大事だよね、買い出しは。
わりと苦しくない言い訳のつもりだったけれども日吉はまったく信じてない様子で更にうさん臭い物を見るようにやる気のない相槌を打った。
「でもこんな日に買い出しですか」
「こんな日だから買い出しですよ?」
「わざわざ制服に着替えて?」
「日吉は制服姿のあたしよりもジャージのあたしのが好きですか」
「右と左の頬どちらを張られたいですか」
淡々とした会話だったのにとんでもない方向に話題が逸れた。
どっかのアホに良くないとこばかり似てきたよこの子。
「なんで殴るの前提なの」
「先輩には口で説明してやるより手を上げた方が早いと跡部さんが」
案の定お前か跡部…!
つかあんたらは何の話をしてるの二人で!
「あのね、日吉もつまんない事で跡部の真似なんかしなくていいの!ホクロ生えるよ?」
「生えません、もう面倒なんでさっさと目の前から消えてください」
シレッとした表情で毎度のように繰り出される暴言。
単に張り飛ばされるよりも心に厳しい言葉をありがとうドチクショウ。
絶対日吉はあたしへの尊敬が足りない。
お説教してやりたい気分だけれどもこんな所で時間を潰してる場合じゃない。
「……今日の所は不問にしてあげます。だから日吉はさっさと練習戻って下克上にでも励んでください」
「喧嘩売ってんですか」
「あんたが言うなあんたが!」
なんか納得しない顔の日吉を追い払うとあたしはそっと裏口の扉を開けてテニス部を後にした。

自由!

あたしは自由ですぞ!!


浮かれて騒ぎたくなる気持ちを押さえ、あたしは平静を装いつつテニス部から離れ、下校する生徒たちの群れに混じろうとした。


多分、この時なんの気なく振り向いてしまったのがあたしの今回の敗因だったんだと思う。


状況を確認しようとしてチラリと振り向いた先には何やらコートの横で偉そうにふん反り返っていた跡部とその跡部に何か喋り掛けながらこちらを指差す日吉の姿があたしの目に飛び込んで来た。


裏切られた…!


日吉の指差す方へ視線を向けた跡部にギクリと身を竦めたのが反ってあたしの姿を目立たせてしまったのか、明らかに奴の視界の中でターゲッティングされたのがわかる。

部室の掃除をしていたはずなのに頼まれてもいない買い出しを部長にも何も言わず裏口から出かける部員なんて考えてみなくても怪しい。
無意味に勘の鋭い跡部のことだからあたしが脱走しようとしてることにすぐに気付いたのだろう。
迷う事なくズカズカと歩き始めた跡部にヤバそうな気配を感じたあたしが慌てて顔を背け足早に歩き出すと、ガシャーン!という金属音(多分足で扉を蹴り開けた音だと思う)と恐ろしげな声……というか罵声が飛んできた。

案の定怒っていやがりますよあの男!


生暖かい風と湿気のせいで不快指数が高かったのはあたしだけじゃない様子です。
デッドオアアライブな状態に突如放り出されたあたしが取れる行動なんて一つしかない。

無視して逃げよう。


鞄を抱え小走りと言うよりは全力ダッシュをし始めると背後から突き刺さる殺意の波動がいっそう強くなる。
イライラしてた所にあたしが意にそぐわない事をしたものだからいつもより導火線が短めだった様子ですよ…!
やっぱり捕まる訳にはいかない…!
あたしは心の中で自分を励ましながら全力で駆けた。





……結果から言うと足下がローファーではなくスニーカーのままだったのが功を奏したのか、この日あたしの逃走距離記録は最長を記録した。



うん、まぁようするに捕まったわけですが。
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2007/09/08 08:19 | 小話

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